SABRINA(麗しのサブリナ)

「五つ星ムービーを見直そう」Vol−01
兎に角 ビリー・ワイルダーをコヨナク愛して止まないのは人後に落ちぬ。
ジャック・レモンと同じくらい。このコンビでない作品をトップに持ってくるこの奥ゆかしさはどんなもんでしょうね。

ヘプバーンのオスカー受賞作「ローマの休日」に次ぐ第二作目。
爽やかにシンデレラ・ドリームをコメディタッチに仕上げた傑作です。劇場用の原作をムービー用に作り変えた。ビリー・ワイルダーは2〜3人のシナリオ作家を編成し 撮影しながらシナリオも進める。時としてシナリオが間に合わないこともしばしば。だから仕掛けもセリフも素晴らしい。洒落ている。そこが大好きだ。

お洒落 その1
ライナス(ボギー)がオフィスの窓から飛び降りようと3時間も悩み 思いとどまった理由を聴かれ「下で子供が遊んでいた」との答えに「その子供が好き!」と応えるセンス。

お洒落 その2
その後オフィスのフロアーでダンスをしながら弟デヴィッド(ホールデン)の代わりにと[kiss]をするが これが重要なターニングポイントとなり 心理変化のキィと連携する。

☆お洒落 その3
*サブリナとライナスがオープンカーで帰宅する時に「前から気になっていた」と言いながら ライナスの帽子のツバをセンス良く直してあげる。これが付箋となって

*パリ行きの客船デッキでのラストシーンでギャルソンが帽子のツバを直して貰うシーン。ライナスの存在を示し 徐に現れる。

お洒落 その4
ラストのラスト 喜びの抱擁に不要な一物「アンブレラ」の処理が洒落きっている。いたずら心満載だ。 

お洒落 その5
お洒落と言えば見逃せないサブリナの衣装。パリ行きまではイディス・ヘッドが担当 質素で品がある これしかないと言う衣装だ。



パリからは担当がジバンシィに替わる。ヘプバーンがじきじきに本人にお願いして実現したらしい。以降長く付き合いが継続する。


おまけのお洒落
パリ行きの前夜 思い余って死を決意 ガレージの数台の車のエンジンに点火し一酸化炭素中毒でと図ったが その内のジープが不調で排気ガスがドーナツ状に出たり ポワ〜ン ポワ〜ン と妙な音がする。「シーー 静かに!」と嗜めるシーンが可笑しい。



1954年の作品。ビリーにとっては 「失われた週末」を皮切りに「サンセット大通り」「第17捕虜収容所」(ウイリアム・ホールディンがオスカー受賞)とオスカーに絡む作品を制作した。「SABRINA」もかずかずの候補に挙がった。この次はモンローとの「七年目の浮気」に続く。


ビリー・ワイルダーの作品は必ず原語版(オリジナル版)で観賞してほしい。特にジャック・レモンとの作品は 尚のことである。物語のあちらこちらに散りばめられた宝石のようなナイスなセリフを 各々の立場で味って頂きたいからだ。ふたりは撮影の現場でもセリフを磨き込んでいたらしい。今に伝わるエピソードだ。それは時代を超えて日常生活の場で生きてくるだろう。
和田誠イラストレーター)さんや三谷幸喜さんなどお歴々がビリーのファンであるのも実にこのようなところを深く愛しているからだろう。