博士の「新刊本」


堤 隆 博士の新刊本です。
3・11の「東日本大震災」 そして「東京電力福島第一原子力発電所事故」には ご専門の考古学という学問にいったい意味などあるのだろうか と強く思ったそうだ。昨年 このBLOGでお伝えした「毎日出版文化賞」受賞の際 監修された戸沢充則明治大学名誉教授のコメントも「(原発事故は)文明の進歩におごった結果の事故ですよ。ところが『文明の進歩は、人類にとって本当は危険かも知れない』という問題を一番追及してきたのが考古学なんです。それなのに、具体的なことは何一つ提言できなかった。考古学とは何だったのか・・・・。市民のために歴史を描く学問として構築し直さないと」だった。
本書の冒頭に
「過去のカビ臭い話を掘り返したところで、たぶん世界は変わらないのだろう。もちろん実学ばかりが学問ではないのだろうが、とくに私が専門とする石器研究についての無力感はいっそう募るばかりであった。そうした一方で、私が勤務する浅間縄文ミュージアムにおいては、浅間山の火山活動の展示している関係もあって、その火山災害史に関する講演の機会が2011年4月以降急増した。考えてみると、過去の火山災害史をひもとくことは、浅間火山の展示を行う博物館に勤務する私の、ささやかな説明責任(アカウンタビリティ)なのかもしれない、としだいに考えるようになった。」と言う。そして浅間火山災害の天明三年(1783年江戸時代)天仁元年(1108年平安時代)の二大噴火に触れる。
887年の北八ヶ岳崩壊 などにもふれ 山麓の遺跡 特に縄文時代との関連にふれている。
「天災は忘れた頃にやって来る」
余りにも有名なこの言葉は寺田寅彦の言葉であるという。私達は災害を「忘れないため」に 克明に知り絶えず対策する姿勢が必要でしょう。
博士は「さまざまな地球環境の激変が起き、大規模な自然災害、そして人災が繰り返す文明の岐路にあって、私たちが人類である限り、過去を忘れず、過去に学び、未来をデザインできる可能性を信じてみたい。」と締め括る。
豊富な資料を網羅し実に理解しやすい文章で全編を構成していて 心地よく読み込める。これは博士の多くの著書に言える最大の特徴です。さしせまって「首都圏直下型大地震」が予想されている今日 私たちが備えるべき大切な事の示唆を受ける事ができるだろう。