分銅型石斧(ぶんどうがたせきふ)

6月27日「寺裏」記事の④でご紹介した「分銅型石斧」ですが上下の刃の部分が欠落しています。補ってみると

長辺が80〜90mm程の縦斧(注①)だった筈です。上下の「刃」の欠け方が激しいので 覚悟の一撃であったのでしょうか?


下部の『刃』は調整刃にも見て取れ 二次使用で「掻器(そうき・皮のなめしに使う)」とされたかもしれません。この様に最初150〜100前後の石斧も 使用していくうちに刃を調整するために 小型化し いよいよどうにもならなくなって廃棄され それが出土することが多い。
同じ「白幡遺跡」や 「上ノ原遺跡」採取(市教育委員会へ提出途上)の同種石斧がありますので 掲載します。


L=100mmの「白幡遺跡」出土

中央が「若宮遺跡」L=100mm左右が「上ノ原遺跡」右L=130mm左L=90mm

両方とも「上ノ原遺跡」右L=150mm左L=130mm
右側の材質は珍しく部分的に「チャート」が混じっている。
これら石斧がどのように用いられたかは「使用痕」を分析すれば解明できる。以前のように「土掘り用」のみではなく 特に「縦斧」は樹木用としても使用された。今回新たに出土した④の「分銅型石斧」は「刃」の欠落が異常で 特異な条件が想定される。
「分銅型石斧」は 括れた部分に先端を割った柄(樹木)で挟み括って固定し使用したと想像します。しかしその様な状態(完成製品)での出土例はなく しかも割った柄が当たる部分を削った例も無い。ぼんくらな現代人をアッと言わせるような方法で使用されていたかもしれません。わが国は酸性土壌であり 樹木などの植物 骨などは残らないのです。先頃 神奈川県の遺跡から400mm程の柄の一部がついたハンマーらしき出土例(条件が良かった)が報告されましたが 極希なことです。


(注①)「縦斧」・・・「鉞(マサカリ)」のように「柄」と「刃」が同じ方向の斧をいいます。これに対し「横斧」は「鍬(クワ)」のように「柄」と「刃」がクロス(90度)します。シャベルやスコップは「横斧」にはいります。