石器の音色ー1

旧石器時代から縄文時代に用いられた石器は 軽く叩いてみるととても妙なる音色が響きます。金属音のような良い音の出る石材は剥がし易い特性を持つことが多いのです。特にサヌカイトは打楽器に遣われてもいます。このサヌカイトは讃岐地方での産だったのでこの様な命名となったように 近畿四国が主な産地で箱根を越えて石材の移動は現在は確認されていません。

手元にある石器のうち 一番音色の良いものからご紹介いたしますと
①石剣(せっけん)

武器として使われたわけではなく シャーマンなどが祭祀に使用したり 権威の象徴としたと考えられています。完品は250mm程の長さであったはずです。サヌカイトより良い音色かもしれません。上ノ原遺跡にある九万八千神社の東隣接地から出土しています。この神社は出雲系(熊野)と考えられますので そのルーツに繋がる遺物かもしれません。

②掻器

フィールドで出土の瞬間 サヌカイトではと考えた石器です。洗浄して分析中ですが珪質頁岩かもしれません。削器に使用された可能性もあります。
①に負けず劣らず良い音色です。上ノ原遺跡出土。

③石斧

300mmはあろうかというこの石斧は緑泥片岩と錯覚しました。それ程グリーンの美しさが目を引いたのです。この石斧は市の教育委員会では石器として扱いませんので提出いたしません。私蔵となります。叩いてみると サヌカイトや珪質頁岩と同様の音色を奏でます。上ノ原遺跡出土。


*遺物の中央に貼ってあるテープは 叩く位置を保護するためのものです。
私達は遺物がどのような傷を負って出土しようと それ以上は決してダメージを増やすことはありません。洗浄中や乾燥 分析 記録などの作業も出来る限り素手で触れるようなことはありません。保存も柔らかな紙などで包みクッション材で保護し厚手の保管用袋に入れ所蔵されます。ただ素手で触れないと伝わらないものがあり この場合は例外ですが。