江戸絵師 紫屋歌麿 上


先日 イタリア中部でコンタ・コルディア号が座礁事故を起こしとんでもない船長が揶揄されている事件の その後 運営会社のコンタ・タロチエレ社から これまたとんでもない発表がありました。
「健康施設内に展示した骨董品や浮世絵が未回収である。」というもので 浮世絵の内訳も発表されました。
北斎12点 歌麿2点 写楽1点 ということです。
内容はまだ明らかにされては居ないが どれもこれも「全人類の至宝」である。もう手遅れなのかも知れないが 許されるなら飛んで行きたい衝動を抑えきれない。ある意味この度の原発事故に似て靴底から足裏を撹くような歯痒さは否めない。
だいたいどんな展示方法だったのか 疑問がある。場所が場所です 「健康施設」ですから開放的な施設なのではないでしょうか。浮世絵の美術館や美術展を訪れた方はご存知だろうが 僅かな光での展示方法になっていた筈です。初めての方は意外さに驚きを感じたかも知れません。そのような展示しか出来ないのが現実です。光源により色彩などの退化が激しいので そのように展示いたします。ですから保管はもっと厳密な事になっています。陽光溢れるイタリアで しかも開放的な観光船で どのような扱いを受けていたのか。客船に展示していたと聞いて神経が震度「7」を振り切ります。
大金を積めば買える文化財ですが 所持した瞬間から重大な責任を負う事になる筈が 手から手に渡った先がこんな事になるんでしょうか。家督の交代もこんな事になる可能性があります。文化財のひとつひとつに「取扱説明書」をつけ 所有者が変わる度に「誓約書」が必要になる時代になったのでしょうか。
1973年から仏像修復の大家 辻本干也さんがNYメトロポリタン美術館に家族ぐるみで出向き館所蔵の修復にあたられ 実に四年半と言う長き期間を要した事は有名な話です。あのメトロポリタン美術館でさえ これです。

美術館といえば 一方ボストン美術館の「スポルディング・コレクション」のお話を「おくちなおし」にしましょう。
21世紀に入って著名なこのコレクションがデジカル化され公開の運びとなりました。稀有な保存が功を奏し質の高い作品でした。なかでも保存の難しい浮世絵の そのなかでも「歌麿」の作品に貴重な作品が多くありました。
NHKの放映や美術展が開催されご覧になられた方もいらっしゃると思います。
長くなりますので 次回「紫屋 歌麿 下」として 記述いたします。