ファイル・歌麿

愛読しておられる方はそれ程多くないかもしれませんが「藝術新潮」と言う雑誌をご存知でしょうか。我々は専門家ですから隅々まで眼を通します。その最新号が店頭に並んでおります。特集はちょっと刺激が強すぎるかも知れません。その特集のTOPに掲載される歌麿のあの「歌まくら」の二階のふたり。扇子に宿屋飯盛の狂歌がポイントですと言う事ですが 私は「透ける技術」が頭脳プレイだと思います。芸術家 藝術をこよなく愛する方々に向けた高尚な雑誌を飾っております。余談ですが絵の中の「男の目」にいはお気ずきですか?

女の鬢の下端に沿うように描かれ「しっかり女を観ています」 いずれにせよこの浮世絵は一遍の愛憎劇の小説の筆を執りたい衝動に駆られます。それは果たして「どろどろの・・・」か「さわやかな・・・」になるかは「虫の居所」によるかもしれませんが。
「衝立の男女」
ピントの良くないPHOTOですが


朝を迎えた男女ふたり 女が男の羽織をいたずらしています。甘えた仕草なのです。これだけですがふたりが抜き差しならぬ仲になった事を暗示しているのです。羽織が透けている効果がどれほどの事かと言う事です。
「當時全盛美人揃」兵庫屋花妻


衣装を透けさせ下の模様を効果的に描いている。
歌麿の気概

「五人美人愛敬競」兵庫屋花妻(判じ絵
花妻が読む文面に「人まねきらい しきうつしなし 自力画師歌麿が・・・・誠に美人画は歌子にとゝめ(とどめ)参らせ候」とある。これは町売りの浮世絵ですよ。しかも銘に「正銘 歌麿筆」と入れている。禁令禁令の幕府との軋轢の最中にこのようなことをしている。この気概たるや如何なものか。
世界に一枚だけの浮世絵

スポルディング・コレクションに一枚しかない歌麿の貴重な浮世絵だ。
寛政九年頃の作品です。歌麿の《髪の生え際》と《後れ毛》の描き方が寛政七年頃に変化します。

直線的な表現がややカーブします。

《後れ毛》も微妙にカーブします。